建設会社M&A売却の適正価格は?2024年相場と成功事例5選
建設業M&A2026年4月8日14min

建設会社M&A売却の適正価格を徹底解説!2024年相場と成功の秘訣

岡部
監修者
岡部
代表 / 経営・M&A・AI経営
千葉
監修者
千葉
AI導入支援
千葉千葉

「うちの会社、売るとしたらいくらになるんでしょう」。M&Aの相談って、最初はほぼ全員この一言から始まりますよね。

岡部岡部

そうなんです。後継者が見つからない、でも従業員や取引先のことを考えると簡単に廃業もできない。そう悩む建設会社の社長さんを、私はこれまで何人も見てきました。

岡部岡部

今日はその「いくらで売れるのか」を、相場と評価の仕組みから具体的にお話しします。M&Aは大企業だけの話ではありません。

少子高齢化による後継者不足と、激化する競争環境。建設業界の事業承継問題は、規模を問わず避けて通れない課題になっている。M&A(合併・買収)は、この課題を解決しながら会社の未来をつなぐ有効な選択肢の一つだ。この記事では、売却価格の相場、企業価値評価の仕組み、高値売却のための準備、そして成功・失敗の分かれ目までを順番に整理していく。

建設業界M&A、いまどう動いているか

千葉千葉

そもそも、建設業界のM&Aって今どれくらい活発なんですか。

岡部岡部

かなり活発です。経営者の高齢化と後継者不足に加えて、業界再編の動きが重なっています。特に中小規模の会社では、技術を持つベテラン職人の引退が相次いで、事業継続そのものが難しくなるケースが増えているんです。

千葉千葉

買う側にとっても、メリットがあるから動きが活発になっている、ということですよね。

岡部岡部

その通りです。特定の専門技術を持つ会社や、安定した顧客基盤を持つ会社への需要が特に高い。大手ゼネコンや中堅建設会社が、事業領域の拡大や技術力の強化、地方進出を目的に、中小規模の建設会社を買収する動きが増加傾向にあります。異業種からの参入も出てきていて、新しいビジネスモデルを模索する動きも見られます。

後継者不在という「守り」の理由だけでなく、技術や地盤を獲得するという買い手側の「攻め」の理由が重なっている。これが、建設業界M&Aが最新の局面でも活況を保っている背景である。売り手にとっては、買い手候補が増えているという点で、決して悪い環境ではない。

売却価格の相場は、どのレンジで語られるのか

岡部岡部

売却価格は「いくら」と一概には言えません。会社の規模、業種、許認可、技術力、人材、財務状況、将来性など、多岐にわたる要素で大きく変わります。

千葉千葉

とはいえ、目安となる数字がないと社長さんも動きようがないですよね。

岡部岡部

一般的な目安は「年間売上高の0.5倍〜1.5倍」、あるいは「EBITDAの3倍〜5倍」のレンジです。EBITDAは税引前利益に支払利息と減価償却費を足したもの、と考えてください。

千葉千葉

なるほど。ただこれはあくまで一般的な目安で、特殊な技術や高収益な会社ならもっと上振れする、ということですね。

岡部岡部

そうです。実際、特定のニッチな分野で高いシェアを持つ専門工事会社が、EBITDAの7倍で売却された事例もあります。自社の強みを正確に評価し、それを買い手に適切にアピールできるかどうかが、レンジのどこに着地するかを左右します。

建設会社M&Aの売却価格帯(一般的な目安)
売上高倍率(一般)
0.5〜1.5倍
EBITDA倍率(一般)
3〜5倍
EBITDA倍率(特殊技術を持つ専門会社)
3〜7倍
0倍8倍
千葉千葉

こう見ると、特殊技術を持つ会社は上限がぐっと伸びますね。逆に言うと、普通の会社は「特殊技術」を作れるかが勝負ということですか。

岡部岡部

まさにそこです。同じ売上規模でも、レンジの下で終わる会社と上で終わる会社の差は、これから話す「企業価値評価」の中身で決まります。

売却価格はどう決まる?企業価値評価の3手法

千葉千葉

このレンジの中で、実際にはどうやって金額を決めていくんですか。

岡部岡部

企業価値評価には、主に3つの手法があります。1つ目がコストアプローチ、いわゆる純資産法。貸借対照表上の純資産額をベースに、土地・建物・重機などを時価評価し、負債を差し引いて算出します。中小企業でよく使われますが、将来の収益力は反映しにくい方法です。

千葉千葉

2つ目、3つ目は何が違うんでしょうか。

岡部岡部

2つ目はマーケットアプローチ、類似会社比較法です。上場している類似会社の株価やM&A事例を参考に、売上高やEBITDAなどの財務指標を比較します。3つ目がインカムアプローチ、DCF法。将来生み出すと予想されるフリーキャッシュフローを現在価値に割り引く方法で、将来の収益力を最もよく反映するため、M&Aでは重視されることが多いです。ただし将来予測の精度が求められます。

これら3つの手法は、単独で使うより組み合わせて多角的に評価するほうが、より客観的で納得感のある企業価値につながる。純資産法だけでは過去の蓄積しか見えず、DCF法だけでは予測の主観が入りやすい。複数の物差しを当てることで、売り手と買い手双方が納得できる価格に近づいていく。

千葉千葉

3つの手法があると分かっていれば、仲介会社から出てきた数字の根拠も聞きやすくなりますね。

岡部岡部

そうです。「その数字はどの手法がベースですか」と聞けるだけで、交渉の解像度が変わります。

建設会社ならではの評価ポイントと無形資産

岡部岡部

建設会社の企業価値を評価する上で、特に効いてくるポイントがあります。許認可・資格、技術力・ノウハウ、人材、保有重機・設備、顧客基盤・受注残高、そして地域密着性です。

千葉千葉

許認可はやっぱり大きいんですか。事業継続に直結する部分ですよね。

岡部岡部

大きいです。建設業許可、特定建設業許可、各種専門工事の許可、1級建築士や1級施工管理技士といった技術者資格は、事業継続に不可欠で、高い評価につながります。特定の工法や特許技術、難易度の高い工事実績があれば、他社との差別化要因として企業価値をさらに押し上げます。

熟練の職人や優秀な技術者、経験豊富な現場監督といった人材も会社の財産であり、評価の重要な要素になる。官公庁や大手デベロッパーとの安定した取引実績、長期的な受注残高は将来の収益の安定性を示すため高く評価される。特定の地域で長年培ってきた信頼やブランド力も、地域密着型の会社にとっては無視できない無形資産だ。

無形資産が効いた実際の売却事例
2倍以上老舗建設会社(純資産倍率)公共工事の実績と若手育成システムが評価され純資産額の2倍超で成立
6倍A社(EBITDA倍率・売上高3億円)特定の地盤改良技術と熟練技術者が評価され成立
1.2倍C社(売上高倍率・売上高5億円)大手商業施設との長期契約と若手育成が評価され成立
千葉千葉

純資産の2倍超えって、財務諸表だけでは絶対に出てこない数字ですよね。技術や人材、顧客基盤という「見えない部分」がそのまま価格に乗っている。

岡部岡部

その通りです。だからこそ、次に話す「磨き上げ」で、この無形資産をきちんと言語化しておくことが重要になります。

高値売却の準備——会社の"磨き上げ"と仲介会社選び

岡部岡部

高値、あるいは適正価格での売却を実現するには、事前の周到な準備が欠かせません。衝動的に動くのではなく、計画的に進めることが成功の鍵です。

千葉千葉

具体的には、何から手をつければいいんでしょう。

岡部岡部

まず自社の「磨き上げ」です。過去3〜5年分の決算書・試算表・税務申告書を整理していつでも開示できる状態にし、不要な資産の売却や不良債権の処理で財務を健全化する。自社の強みを具体的に言語化し、今後3〜5年の事業計画を策定する。経営者個人に依存しすぎない組織体制を作ることも欠かせません。

建設会社M&A、成約までの流れ
  1. 1
    会社の磨き上げ財務整理・強みの言語化・事業計画策定・組織体制の整備
  2. 2
    M&A仲介会社の選定建設業界での実績・専門性・ネットワーク・担当者との相性で選ぶ
  3. 3
    交渉・デューデリジェンス対応強みをアピールしつつ誠実な情報開示で信頼関係を築く
  4. 4
    クロージング・引き継ぎ顧問として残るなど、従業員・取引先への配慮を含めて引き継ぐ
千葉千葉

仲介会社選びも重要な工程ですね。この辺り、私は費用面がやっぱり気になります。手数料体系はちゃんと確認したほうがいいですよね。

岡部岡部

おっしゃる通りです。建設業界での実績、専門性、買い手候補のネットワーク、担当者との相性に加えて、手数料体系は契約前に必ず確認してください。仲介会社は企業価値評価から買い手候補の探索、交渉サポート、契約書作成支援まで幅広く支援してくれますが、納得のいく費用感で契約することが前提です。

交渉とデューデリジェンス、成功と失敗の分かれ道

千葉千葉

実際に交渉が始まってから、気をつけるべきことはありますか。

岡部岡部

自社の強みを最大限アピールしつつ、冷静に価格交渉を進めることです。買い手によるデューデリジェンス、いわゆる買収監査では、財務・法務・事業・人事などあらゆる側面から詳細な調査が行われます。ここで誠実かつ迅速に情報開示することが、信頼関係の構築につながります。

千葉千葉

逆に、うまくいかなかったケースもあるということですよね。

岡部岡部

あります。ある会社は、M&Aを検討している段階で情報管理が不十分だったため、話が従業員や取引先に漏れてしまいました。従業員の動揺と取引先の不信感を招き、結果的にM&A自体が頓挫して、会社の信用も大きく損なわれています。もう一件は、提示された売却価格に固執しすぎて交渉が長期化し、その間に市場環境と買い手側の戦略が変わってしまって、当初の魅力的な条件が失われ、大幅に低い価格でしか売却できなくなった事例です。

情報管理の徹底と、タイミングを見た柔軟な姿勢。この2つが欠けると、せっかくの好条件が交渉の途中で失われてしまう。専門家のアドバイスを聞きながら進めることが、機会損失を避ける最も確実な方法だ。

千葉千葉

隠し事があると、交渉決裂や価格の引き下げにつながる。事前にリスク要因を洗い出しておく、という準備の話ともつながりますね。

岡部岡部

まさにそうです。準備段階の「磨き上げ」と、交渉段階の「誠実な開示」は、同じ根っこの話なんです。

売却後の選択肢と、見落とせない税務

岡部岡部

会社を売却した後の経営者の選択肢は多岐にわたります。引退してセカンドライフを送る人もいれば、売却資金を元手に新事業を立ち上げる人、投資家として資産運用に専念する人もいます。売却先の会社で顧問やアドバイザーとして残り、引き継ぎをサポートするケースも少なくありません。

千葉千葉

経営者だけでなく、従業員や取引先への影響も大きいですよね。オーナーが変わることへの不安は、当然出てくると思います。

岡部岡部

おっしゃる通りです。売却決定後は適切なタイミングで従業員に説明し、雇用条件や待遇がどうなるかを明確に伝える。買い手側とも連携して不安を解消する施策を検討し、長年お世話になった取引先にも経緯と今後の関係性を丁寧に説明することが必要です。

千葉千葉

もう一つ、税金の話も気になります。売却益が出れば、当然そこに税金がかかりますよね。

岡部岡部

はい。売却スキームによって税負担が変わります。株式譲渡なら個人の譲渡所得として約20%の税率が適用されますが、事業譲渡の場合は法人税と所得税が二重にかかる可能性があります。

売却スキームによる税負担の違い
株式譲渡事業譲渡
課税の形 個人の譲渡所得として課税 法人の資産譲渡益として課税
税率の目安 約20%(分離課税)× 法人税と所得税が二重にかかる可能性
手元に残る資金 比較的多くなりやすい 二重課税で目減りしやすい
千葉千葉

同じ売却でも、スキームの選び方で手元に残る金額がこれだけ変わるなら、税理士との相談は絶対に飛ばせないところですね。

岡部岡部

その通りです。M&A仲介会社や税理士と密に連携して、どちらのスキームが有利かを事前に見極める。そこまでやって初めて、手元に残る資金を最大化できます。

まとめ:相場は目安、価格を決めるのは磨き上げと開示の誠実さ

千葉千葉

整理すると、相場は売上高の0.5〜1.5倍かEBITDAの3〜5倍が目安。でもそれはあくまでスタートラインで、許認可や技術力、人材、顧客基盤といった無形資産の言語化次第で、実際の成約価格はレンジの上にも下にも動く。準備段階の磨き上げと、交渉段階での誠実な情報開示、この2つがそのまま結果に効いてくる、ということですね。

岡部岡部

そうです。M&Aは複雑なプロセスで、専門知識と経験が求められます。ただ、適切な準備と信頼できる専門家のサポートがあれば、自社が持つ真の価値を最大限引き出し、納得のいく形で次のステージへ進むことは十分可能です。長年培ってきた技術や信頼、従業員の未来を守るためにも、まずは自社の現状を数字と強みの両面で棚卸しすることから始めてみてください。

参考・出典

※上記の一次情報(公的機関)を確認日:2026年7月23日時点で参照。制度・税率・要件・保険料等は改正されることがあるため、実際の手続きの際は必ず各公式サイトで最新情報をご確認ください。

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